開発者の失敗を IT 管理者は悪気がないと仮定すべきか?
「Steve はどこだ?」
部屋は、われわれの新しいソフトウェア製品について学びたくて待ちきれない様子のパートナーでいっぱいだった。だが、そこにインストラクターの姿はなかった。Steve である。
残念ながら、そのことにはさほど驚かなかった。彼には遅刻の前科が何度かあるのだ。しかし、今回は遅すぎるし、室内のエンジニアたちは我慢しきれなくなっている。
Steve の仲間の1人に、彼がどこにいるか知っているかどうか聞いたが、「すみません。彼の保護者ではないですから」というピリピリした答えが返ってきただけだった。チーム内の友人さえもが Steve に対してややいら立ちを見せ始めていた。
Steve には何度も電話したが応答がない。
最終的には、別の開発者が講師になることを申し出て、この重大な局面は回避された。彼女の講師としての才能は Steve ほどではなかったが贅沢など言っていられない。
Steve の上司として、筆者は選択を迫られた。詳しい話に入る前に質問させていただきたい。もしあなたが Steve の上司だったらどうしていただろうか?
まず自問していただきたい。もしあなたの開発チームが失敗を犯したら、あなたは真っ先にどう考えるだろうか? 過去の実績は最初の反応をどの程度左右するだろうか?
あなたの個人の過去の経験はどの程度左右するだろうか? 社風はどうだろうか?
通常は、何らかの反応をする前にこれらのことをすべて考える。だがもし、ついカッとなって相当腹を立てていたら、「一体全体何を考えているんだ!?」などと、その人物をとにかく怒鳴りつけたくなると思わないだろうか?
最悪、「クビだ!」と言ってしまうかもしれない。
現実を直視しよう。人は間違いを犯す。その回数も人それぞれだ。間違いは、誤った選択、計画のミス、スキル不足、想定外の状況、あるいは単なる不運などの結果として生じる。
しかし、それに対する最初の反応が「クビをへし折ってやる」でいいのか、それとも「何があったか説明しなさい」のように言うべきなのか、どちらだろう?
このような状況のために、筆者はどの会社の社是としても推薦できる貴重なことを上司から教わった。最初は善意からの行動だと常に仮定せよ、というのが彼の理念だった。
問題は、そう考えるのは容易なことではなく、大半の会社にはそのような姿勢が本来備わっていないことに筆者が気付いたことだった。これは、非常に小さい問題でも、たちどころに非難と怒号が飛び交う重大局面につながってしまう IT 部門に特に当てはまる。
したがって、悪気がないということを心から信じ、その気持ちを問題発生時の最初の反応にできるよう努力するのが管理者の責務なのだ。
しかし、その人物が過去に問題を繰り返していたらどうだろう? 自分のミスがチームに与える影響などその人物が全く気にしていなかったらどうだろう?
つまり、もしその人物が単なる愚か者だったらどうだろうか?
すべてもっともだが、平静を維持し、この問題を解決してから事実を集めて原因の究明と再発を防ぐ努力をする一貫した対応が求められる理由はいくつもある。
まず最初に、問題の人物が割り当てられていた作業を理解していたかどうか尋ねる。指示は明確だっただろうか? その任務の優先順位を理解していただろうか?
筆者は伝達ミスが絶対にないよう、チームメンバーには期待されている作業内容を繰り返してもらう。最初は理解力を試されているような気持ちになり、これを嫌がるメンバーもいる。そう、実際に試しているのである。しかし、全員が同じ対応で、それが前向きな事情からであることが分かれば、たいていは問題にならない。
もう1つ検討すべきはトレーニングと経験だ。その人物は作業を遂行するのに必要なスキルを持ち、トレーニングを受けていただろうか?
もちろん、管理者は自分のチームメンバーのスキルセットを把握し、作業を完了するのに適した人物を選んでそれを割り当てるべきだ。しかし、(意図的であれ何であれ)時には履歴書に矛盾が生じる場合もある。
あるいは、もしかするとかつて経験を積んだソフトウェアであっても、新バージョンが出てしまい、持っているスキルが時代遅れになってしまう場合もある。最適なのは、さらに深く掘り下げて彼らの現在の能力を徹底的に調べ、作業に対する適性を確認することだ。
そして最も重要なことは、「彼らの仕事を成功させるのに何か自分にできることはほかになかっただろうか?」と常に自問することだ。結局のところ、効果的かつ効率的に作業を処理できる最高のチームを作業にあたらせることが管理者としてのあなたの責任だ。つまり、成功に必要な適切なツールを彼らに確実に持たせるということだ。
あなたは、「ポジティブなアプローチを取ることが社風に与えるメリットは何だろう?」と考えているかもしれない。簡単に言えば、プラスのエネルギー、権限責任付与、そしてリスクを冒すことの組み合わせが組織にとって非常に大きな長期的メリットへとつながっていくところに環境ができていくのだ。
まず、動機を疑うことで無駄になるかもしれない膨大な量の心理的エネルギーが節約され、それが本当のプロジェクトの作業につぎ込むエネルギーも解放する。その人物がおそらく持っていなかったであろう陰湿な動機をすべて考える代わりに、状況を改善する方法を考えられるのだ。
2番目に、組織はこれにより、正しいことをして、言い訳を必死に用意したり本当の動機を疑われる心配をせず適切なリスクを負う能力を持ったリーダーを育てられるようになる。たしかに、それではさらに多くのミスが起きるかもしれないが、成功や、さらには技術革新まで増えるのだ。
最後になるが、ポジティブなアプローチを取れば、自分の仕事を好きになるポジティブな人が育つ。このような社風は、人々が出勤するのを楽しみにし、自分たちの仕事にワクワクできる環境を作り出す。これは前述の2つのポイントの結果であり、人々が心から自分の仕事を好きになり、会社に長期にわたって在籍し、組織が人材確保やトレーニングにかけるコストを節約してくれる。
さて、善意を仮定することと、人に責任を負わせることは大きく違う。ここで Steve に話を戻す。
この場合の違いは、Steve には仲間を失望させる前歴があったことだ。明らかに非生産的行動パターンがあり、今回は堪忍袋の緒が切れた。筆者は事実を集めながら、それでもポジティブな態度を取ろうとしたが、結局は責任感が完全に欠落していたのだ。
重要なポイントは、今回の状況も同じように扱えば、チームの残りのメンバーは常に悪意がないものと仮定されることを明らかに期待し、そのほか全員の今後の行動に良い影響を与える。そして、それは必ず組織全体に良い結果をもたらすのだ。
参考1:あなたはブルーカラー開発者、それともホワイトカラー開発者?
参考2: ソフトウェア開発者は生まれつき変わり者なのか?
参考2: Why Developers Get Fired (開発者が解雇される理由)
著者紹介:Eric Spiegel は、Citrix などの各種仮想化プラットフォームのプランニング、管理、および監査を行うソフトウェアを販売する XTS の共同創業者兼最高経営責任者(CEO)。
http://japaninternetcom.pheedo.jp/click.phdo?i=809e0419a3a289c4da5a4adbfb149a9e
男の甲斐性はやはり「稼ぎ」ですよね〜〜。。
愛があるといっても、優しいといっても、まずは稼げる事が前提ですよ!
女性って本当にシビアですよね〜そういうとこ。たまに怖くなりますw
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